『序列社会』約1200字 日本人は自分が一つの集団に属することによる安心感を抱き、結果的に集団志向が強い。人々が集まると、当然、集団の中での序列が重要な意味を持ってくる。 日本の集団は、会社や官公庁の職場はもとより、地域の集まりや趣味の習い事の集まりに至るまで、その集団を構成する人々の結びつきを強めるため集団の中での上下関係が重視される。上下関係を守りながら，それに従って振舞うことが要求される場合が多い。縦割りの「序列社会」、つまり「タテ社会」が日本社会の特色となっている。 日本では人が集まると常に序列が意識される。タテ社会では当然、序列によって人々の行動様式が影響を受ける。序列を決定する基準は、社会的地位、年齢、集団の中での経験年数、性別などである。 公式の場では、誰がどこに座るかという席順、席次が決まっている。 日本式の和室では、入り口の反対側に「床の間」があり、その前が上座で、年齢の上の人や地位の高い人やお客さんが上座に座る。入り口付近が下座になる。 日本人は謙遜や遠慮を美徳とすると言われているが、遠慮するあまり、広い場所などでは多くの人が下座に座ろうとして、座る場所がなかなか決まらないと言う場所がしばしば見られる。さらに、上下関係を重視する国民性が日本語の「敬語」を発達させたのだが、敬語の使い方や発言の順序、時間なども各人の序列が大きく関係している。 タテ社会が最も顕著に現れているのが企業や官公庁の職場である。同じ年次に入った人たちが同じ階層を構成して、給料と地位がほぼ同じスピードで上がっていく。勤続年数が長くなるにつれて給料と地位が上昇していく慣行が年功序列制である。 こうしたタテ社会ではまず情緒的な一体感が生まれる。会社や役所の上司が部下の結婚式の仲人を務めたり、職場ごとの運動会や花見、慰安旅行などを催したりすることが普通に行なわれる。上司も部下も、生活全般が会社や役所と深くかかわっているという実感の下で、社員、職員の間に常に組織と一体になっているという意識が芽生えてくる。つまり、共有する「場」を通して一種の同族意識が生まれるわけだ。 日本の若者が大学や高校を卒業する時、どうな仕事をしたいかという就職」の意識より、どの会社に入るかと言う「就社」の意識が強い、と言われている。これは、規模の大きな会社ほど縦割りの秩序が整っているため将来の不安が少ない、という安心感からだ。採用が決まった時に職種が決まっていない場合が多い。採用後に会社が決めるため、本人の希望がまったく聞き入れられないケースも少なくない。こうした事情も、若者は「どんな仕事をしたいか」より「どういう会社の人間になるか」が重要だと考えざるを得ない背景になっている。 本文来源：https://www.wddqw.com/doc/2e7d56bef121dd36a32d825e.html