「古都」からの思い 初めて川端康成から書かれた「古都」を読むのは二年生の時であった。その時、読むには読んだが、作者はどうしてこの作品を書いたの、全然わからなかった。でも、日本語の美しさがしみじみと感じられた。日本語でなければ、この美しさは実感できないと思っている。 今学期、もう一度読んだ。そして、映画も見た。なんだか、作者の創作の気持ちがすごしわかってきた。この作品は、京都の春夏秋冬と移ろいゆく季節を背景に、捨子でありながら佐田太吉郎としげに拾われ、呉服問屋の一人娘として育てられた千重子と、姉か妹かは不明だが、千重子の双子であり、北山杉の村で働く苗子が祇園祭の夜に再会し、互いに惹かれゆくさまを描いた、極めて日本的な情緒に満ち溢れた美しい作品である。 千重子は養父母に大変に愛された、捨て子であり、時々悲しがった。生父母はどうして自分を捨てたのと頭を悩みした。幼なじみの真一は千重子にいろいろなことを手伝ってくれ、慰んでくれた。多分、この二人のあいだに、恋があると私はこう思っている。二人は最後も付き合っていなかったが、可哀想もなかった。むしろ、読者の心に美しい愛情を残ったといったほうが良いだろう。作者にとって、この作品の主題は恋ではなく、この二人のあるかなきかの恋を描いたことを通して、この古い町の暖かさも自然に表現できたと私は思っている。 この作品には、最も印象的な場面は雷の場面で苗子は千重子の上に重なり合ったという場面である。北山杉に千重子は苗子と話し合っている時、大雨が降ってしまた。苗子は自分の小柄な体で千重子を守った。苗子の愛情に感動された。苗子は純粋で、心が良い人である。作者はこのような人を通して、大自然の良さも現れた。苗子は大自然の子供と言って良いだろう。 この作品には、千重子や苗子を通して、物語における教訓めいたものが主題として描かれている訳ではなく、ただ背景の京都の年中行事と自然の描写がかくも美しく、そこに生きる人々の人間模様が写実されているのである。つまり、この作品においては、人の背景に自然があるのではなく、自然の中に人が生きている、という描写が為されているのだと私は思う。川端康成の書く日本語の行間を活かした奥ゆかしさに、純粋に読者は酔わされる。作品を通して思想的に何かを訴えかけられるわけでもなく、ただ純粋に日本的な四季の美、そして人情の美というものを、この作品を通じて読者は得られるだろう。 千重子の養父も重要な人物である。才能があったが、この時期に適していなかった。自分の個性も他人に認められなかった。作者はこの人物を通して、あの時期の経済不景気を表した。でも、この街の人は誰でも諦めなかった。日本人に独特的な性格だからであり、いつもゴツゴツと働いていた。 この作品は読めば読むほど、もっと好きになってきた。そして、その美しさに感動された。わたしも是非その古都に行きたい。 1001グラス 龍紅嬌 本文来源：https://www.wddqw.com/doc/a773c65fe518964bcf847ca1.html