第四課 何より健康 新入社員は、入社後一、二ヶ月の間に、社会人としてのさまざまな洗礼を受ける。通勤ラッシュもその一つだろう。 日本女子大学文学部の本間道子教授は、さまざまな空間が人間に及ぼす影響についての研究「空間行動学」を専門にしているが、通勤ラッシュについて、 「人間には、パーソナルスペースという、他人がこれ以上近づいては困る距離、苦痛を感じる距離がある。この距離は状況によって変わるが、日本人の場合、一般的には120センチメートル前後。満員電車はそれを侵し、他人が自分の空間に入ってくるし、他人の空間にも入らざるをえない、非常にストレスが高まる空間」と考える。 心身ともにストレスを最小限にとどめ、疲れずに過ごすことはできないものか。本間氏は、多くのサラリーマンは経験的に自衛手段を講じていると見ている。それは本や新聞を読む、ヘッドホンで音楽や英会話のテープを聴く、ラジオで情報を得るなどである。 「これらは、自分にかかってくる刺激を、何かに集中することによって遮断しようとする消極的な自己防衛と言える。また、多くの人が周りの人間を『人』と見ないで『もの』と見なしている。『もの』であれば、パーソナルスペースに入られても苦痛を感じなくてすむ」と分析する。 運動不足解消の場、疲労回復の場にしてはと言うのは、東京学芸大学保健体育科の宮崎義憲助教授。 「早朝も帰宅後も運動の時間が取れない人には、通勤電車は格好の運動の場になる。吊革や握り棒を使って筋力アップが図れるし、つま先立ちの繰り返しや揺れに任せて体重を片足だけにかければ、下半身の強化になる」 宮崎氏はさらに、帰りの電車は座るよりたったほうがよいとも言う。そのわけは、 「人間はずっと同じ姿勢を続けることが一番疲れる。座って仕事をすることが多いサラリーマンは、帰りの電車は座るより、むしろ立った方が、腰などの曲所疲労の回復にはよい。立って腰を回したり、アキレスけんを伸ばせば、その部分の血液循環がうながされ、筋肉疲労がとれる。 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/0669db39b0717fd5370cdc35.html