日本語の方言(にほんごのほうげん)、すなわち日本語の地域変種(地域方言)について記述する。 日本語の方言は大きく本土方言と琉球方言に分かれ、それぞれがさらに細分化できる(区分章を参照)。本土方言と琉球方言の間では全く通じあわないほどの違いがあり、本土方言内の違いも大きい。明治以降、東京方言を基に標準語が確立され普及が進められたが、戦後は標準語・共通語と方言との共存が図られた(歴史・近代以降章を参照)。しかし、各地の伝統的な方言は急速に衰退している。 日本では「方言」という語は、「めんこい」「おもろい」「ばってん」のような標準語や共通語とは異なる各地方独特の語彙や言い回し(「俚言」)あるいはアクセントや発音の違い(いわゆる「なまり」)を指す場合が多いが、言語学ではアクセント・音韻・文法などを全てひっくるめ、その地域社会の言語体系全体を指すのが一般的である。すなわち、東京という一地域の日本語の体系ということで「東京方言」も当然存在する。俗に「お国言葉」などとも言う。標準語・共通語やその基となった東京方言に対して、その他の方言は「教養のない田舎者の言葉」「訛っている」「崩れている」などと否定的に捉えられがちであり、また特定の方言に対する「○○弁は汚い」「○○弁は上品」などの意識が存在する。しかしいずれの方言も標準語・共通語も日本語の変種の一つであることに変わりはなく、本来全て等しく扱われるべきものである。 日本は地方ごとに語彙・文法・音韻・アクセントなどあらゆる面で方言の差が大きく、異なる地方に旅行や出張をした際に言葉が通じず苦労する場合も少なくない。特に沖縄県や鹿児島県奄美群島の言語は、文献時代に入るよりも前に本土方言から分岐してしまい、日本本土との往来も少なくなるうちに、5母音が3母音化する(例:おきなわ→うちなあ)など、一聴する限り外国語のように聞こえるほどの差が生じた。そのうえ、琉球諸島は政治的な統合も遅れ、各地で互いに通じ合わないほどの方言分化が発生した。このため、琉球諸島の言語を日本語の方言とする考え方の他に、「琉球語」として日本語と同系統(日本語族)の別言語としたり、「琉球諸語」として異なる言語の集合と位置づける考えがある。そもそも「言語」と「方言」の客観的な区別法はなく、国境の有無のような政治的条件や正書法の有無などにより判別されている。またユネスコが2009年に発表した消滅の危機にある言語の調査では、「国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当」として、八重山語、与那国語を「重大な危険」、沖縄語、国頭語、宮古語、[1]奄美語、八丈語を「危険」の区分に独立言語として分類している。 方言の地域区分を「方言区画」と言う。日本語の方言区画は、まず本土方言と琉球方言に分けられる。方言区画は、学者によって異なり、下の分類は東条操による区画案に近い。この案では、本土方言は東日本方言(北海道から岐阜・愛知ま[2]で)と西日本方言(北陸から中国・四国まで)と九州方言の3つに分けられた。日本語の方言のアクセントには、大きく分けて、京阪式アクセント、東京式アクセント、二型式アクセント、一型式アクセントがある。京阪式アクセントは、近畿・四国の大半と北陸の一部に分布する。東京式アクセントは北海道・北奥羽・甲信越・関東(栃木県・茨城県除く)・東海(三重県除く)、奈良県南部、近畿北西部・中国、四国南西部、九州北東部に分布する。京阪式と東京式の間には垂井式アクセントなど両者の中間のアクセントが分布する。二型式アクセントは九州西南部に分布する。また、東北南部・関東北東部や九州の一部などでは、アクセントによる語の区別を行わず、無アクセントと呼ばれる。日本の中央部に京阪式が横たわり、その東西に東京式が広がるという周圏分布を示しているが、日本語のアクセント史についてはその逆で、京阪式から東京式が生まれたとする説が有力である。京都のアクセントの記録が平安時代から残っており、その平安期京都アクセントと一定の対応関係のあるアクセントが、琉球方言を含む全国の現代方言に存在する。これら京都アクセントの記録や現代方言同士の比較から、金田一春彦や奥村三雄は、平安期の京都アクセントに近いものが各地で変化して、今日のようなアクセントの方言差を生んだと推定している。 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/9283ae23aaea998fcc220e64.html