裸の王様についての人物――太郎 ① 一人ぽつんとアトリエの床に座り、もの憂げなまなざしで辺りをながめるばかりだった。 ② きちんと時間どおりにやって来て一時間ほどしんぼう強く座っては帰って行く ③ かれはほとんど無口で感情を顔に出さず、ほかの子供のようにイメージを行動に短絡することがないのである。 ④ 夫人に言われるまま、黙ってランドセルを絵の具箱に替えて背に掛けた。そんな点、かれはまったく従順であった。 ⑤ かれは仲間に対して圧迫感を抱いている。母親に禁じられてかれは粗野で不潔な仲間と交わることができず、いつも一人ぼっちでいる ↓ かれはぼくがこぎ始めると必死になってロープにしがみつき、笑いも叫びもしなかった。下ろしてやると、この優等生の小さな手はぐっしょり汗ばんで、かえるの腹のように冷たかった。 ↓ ① それまで一人ぼっちで絵筆をなぶっていた太郎がひょいと立ち上がったのである。見ているとかれはすたすた仲間の所へ近づき、人だかりの後ろから背伸びしてえびがにの絵をのぞき込んだ。しばらくそうやってかれは絵を見ていたが、やがて興味を失ったらしく、いつもの遠慮深げな足どりで自分の場所へもどって行った。 ② 不意に話しかけられたので太郎はおびえたように体を起こした ↓ はっきりそれとわかる抗議の表情があった ↓ 初めのうち太郎は泥がつくことをいやがっていたが、そのうち靴にしみが一点ついたのをきっかけに、だんだん大胆に泥の中へ踏み込むようになった。 ↓ ① かれは暖かい息をぼくの耳の穴に吹き込んだ。 ② かれはアトリエにやって来ると、ぼくにぴったり体を寄せたて、グヮッシュを練るぼくの手もとをじっとながめた。 ③ 軽口をきく ④ かれは体をすり寄せ、控え目ながらも一人息子の傲慢さを隠した甘え声を出した。黙っていると、ぼくの体を押したり、突いたり、ひょっとすると後ろに回って背をつねったりする ↓ かれは以前におびえたことをすっかり忘れ、さっさとふたを開けて指を突っ込むと、幼稚園へ行ってるずっと小さな子供たちといっしょになって紙を真っ赤に塗りたくった。 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/31c7f17a168884868762d6e7.html