『注文の多い料理店』感想文 まずこの小説のあらすじを簡単に紹介しよう。 登場人物は二人の若い紳士だ。イギリスの兵隊の形をして、山奥に狩猟（しゅりょう）にやってきた。狩りのため、2匹の白熊のような犬を連れて山道を歩いていた。犬たちはめまいを起こし死んでしまいました。しかし、紳士たちはいくらの損害だけを気にするのだった、帰り道がわからなくなっていた。お腹がすいたので戻ろうとしたとき、西洋料理店山猫軒という西洋風の家を発見した。中へ入ると、次々と部屋があり、扉には、「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください」などと記されていた。二人は扉の注文に従うにつれて、「どうもおかしいぜ」とようやく気が付いた。逃げ出そうとしたが、戸にはかぎがかかっていた。最後に死んだはずの2匹の犬が現れ、助けてきた。そして、部屋は煙のように消えて、二人は寒風の中に服を失って立っていた。まもなく、犬と案内人も戻ってきて、2人は東京へ帰ったが、恐ろしさのあまりくしゃくしゃになった顔は、どうやっても元には戻らなかった。 『注文の多い料理店』は、読み終えて、作者の意図や思想がわかりにくい作品、言葉を換えれば、奥が深い作品だと思った。ちなみに、『セロ弾きのゴーシュ』を読んだ時も同じように感じた。 表面的にストーリーだけを追えば、西洋かぶれの紳士を風刺した教訓話だと思う。しかし、紳士たちとて、ブルジョアや、貴族ではなく、たんなる西洋化の流れのなかでかぶれた小物だと思う。世の中の流行にうかれてちょっと舞い上がるくらいのことは、いつの時代にもあり、動物の命うんぬんをさておけば、目くじらをたてるほどのことでもないような気がする。ましてや、紳士たちは、人のよい田舎者でだまされて痛い目に遭いそうになったという程度で、それが悪だとか、糾弾されるべきだと主張するのであれば、もっと別のストーリーを構築する必要があると思う。 しかし、宮沢賢治は、2人を助けてはういるが、たかが小物である2人の顔に一生の刻印を押している。何かそこに強い主張や思想を感じるのですが、一生の十字架を背負わされるには紳士たちがのんきでお人よし過ぎ、かえって、明確な悪意などが感じられない。 『注文の多い料理店』は、単なる教訓話、説話ではなく、読み終えて、何ともいえない違和感やふに落ちない気持ちを含めて、読者の心に波紋を呼ぶような作品だと思った。作者が自分の思想や主張を前面に出すよりは、問題を提起することによって、読者の心に波紋を呼び、それが読者の中で次の何かを生み出してくれたらと願って書かれた作品なのかもしれないと思った。 本文来源：https://www.wddqw.com/doc/800d9696910ef12d2af9e7fd.html