QQ農場ブーム 1、背景 2008年、中国では「今日野菜盗んだ?」が流行語になり、学生からサラリーマンまで、幅広い年齢層の間であるオンライン・ゲームが爆発的にブームになった。新聞や雑誌などのマスコミは、と日本に翻訳したら、全国民は野菜を盗む時代に入ったという「全民盗菜時代」の見出しを付けた文章を発表し、それについて一時的に中国全国範囲での熱い注目を集めていた。そのゲームの名は「QQ農場」である。日本でもmixiで人気の「サンシャイン牧場」や「みんなの農園」は、実は中国産で、このゲームでリリースされているのである。 では、なぜ「QQ農場」は大流行になれるのか。それはただの偶然なのか。そのなぞを明らかにするためには、まず「QQ農場」の土壌であるQQを知るべきであると思われる。 2、QQ、TencentとQZone 中国全国に渡って知られていると言ってもいいほど大人気であったこの「QQ農場」は、オンライン・チャットなどのコミュニケーションツールとして有名なソフトQQは、無料で提供しているオンライン・ゲームである。オンライン・チャットのソフトとして、SkypeやWindows Liveなどがあるが、中国で圧倒的に市民権を得ているのが、QQであることが言うまでもない。 QQは若い世代を中心に、中国のほとんどの人が使っていると言っても、過言ではないであろう。インターネット上のチャットやインターネット通話、SNS、そしてゲーム、音楽、動画などを総合的に提供しているサービスの総称である。中国のWebサイトには、連絡先としてSkypeとQQの両方のIDを書くのが一般的である。中国人の使い分けとしては、国際間を含むビジネス用途ならSkype、中国国内の一般大衆同士ならQQを使うという。そして、このQQを運営する会社は、中国一のインターネットポータルのTencentである。Tencentは絶大な人気のインスタントメッセンジャー製品、QQで主にその名を知られている。 2009年1月26日にTencentのソーシャルネットワークサービス、QZoneのユーザー数に関する最新レポートが公開された。公開された報告のデータによると、2009年1月31日まで、中国最大のSNSだといわれているQzoneが、2億人以上に使われており、つい最近(2009年)に1億7500万登録ユーザーを超えた世界的プレーヤーのFacebookやMySpaceを上回っている。そして、全2億人のうち約1億5000万人がQzoneでブログを書いたり写真を共有したり、他のユーザーと接触するなどアクティブに活動しているという。Qzoneでは、1日平均6000万枚の写真をアップロードしていることになっている。さらに2009年2月9日には、QQを同時に5000万ユーザーが使ったとされている。 この巨大なるユーザー数で、「QQ農場」の爆発的な大流行の土壌ができたという。 3、ゲーム内容 「QQ農場」は、作物を作り育て、お金を稼いで自らの農園を発展させるというゲームである。このQQ農場では、自分で農地に種を植え、水をやり、時間の経過と共に成熟すると、収穫して売ることができる。そして、このQQ農場の最大の特徴は、他人の農園で栽培している作物の面倒を見ることができ、他人の作物を勝手に収穫することもできるということである。 4、ブームになった要因 4-1.中国における巨大なインターネット利用者数 以下の図のとおり、2010年のデータによると、およそ4億2千万人もの中国人がインターネット使っている。インターネット利用者数のランキングのトップを占めている。その次はアメリカで、次に日本、インド、ブラジルである。 4-2. ゲーム設定 2億人近くが利用するチャットソフト「QQ」を提供する騰テンセント訊社がリリースしたこの「QQ農場」は、後発ながらも一番の人気な理由は、チャットアカウントを紐付けできることにあると思われる。 新しい設定や登録などを必要とせず、即チャット仲間とゲームを楽しめるからである。また、先発のゲームよりもグラフィックや使い勝手が向上し、わかりやすい点も挙げられる。 4-3. オンライン・ゲームの無料化 中国ではここ1、2年、ネットゲーム運営各社が、リスク回避をおこないつつ、新たな利益ポイントを発見するため、プロフィットモデルの革新、製品開発、流通チャンネルの再編、プロモーションなど、さまざまな分野で激しい競争を繰り広げてきた。その実態が、IDC中国の報告書「中国遊戯産業市場2007-2011分析与予測」で明らかにされている。同報告書では今回、特に「無料ゲーム」がネットゲーム市場と産業に与える影響について焦点をあてている。 中国におけるゲーム業界最大手の盛大は、主力ラインアップのゲームの無料化に業界で初めて踏み切った。これを契機に、無料ゲームが一気に市場全体に浸透、いまやボードゲーム、カードゲームから大中型エンタテインメント系ゲームへ、そして、大型MMORPGにまでその波が押し寄せている。「QQ農場」はその中の一つである。 5、ブーム後の社会的問題 ゲーム設定によって、長時間にオンラインすることが必要であるため、ゲームに夢中になり、仕事中も農場系オンラインゲームばかりやっている社員と上司や家族とのトラブルにまつわるニュースが次々と登場した。バーチャルでは飽きたらず、オフ会で農場に農場ゲーム利用者が集結し、リアル農場ゲームを楽しむなんてニュースもあったのである。 農場ゲームは日本では「育てゲー」と認識されるが、中国では「QQ農場」は「盗みゲー」と認識し呼ばれている。中国政府の省のひとつ「文化部」がこうしたゲームを『「盗みゲー」ではなく「育てゲー」と呼ぶこと』また、ネット上の「菜」という語の氾濫を危惧し、09年12月にこの呼び名を禁止する通達を発している。 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/9e5a0c6b1eb91a37f1115c1a.html