第5課 東京回顧写真展 小池真理子 解 説; 小説の読解には、「小説の構成」「小説の構成要素」を念頭において読む必要がある。 〈小説の構成〉発 端 〈小説の構成要素〉 社会背景(時代・場所) 山 場 事件(出来事) 結 末 近代小説の特徴は、主人公の心理描写を通して作者の心情・考えを吐露するというところにあるので、〈構成〉においては、「山場」と「結末」の段落に、小説のテーマにかかわる事柄・内容が述べられていることが多い。また、〈構成要素〉においては、主人公が事件(出来事)に遭遇して、どう思い、何を考えたかという心情を把握することが重要である。 さて、教科書の本文で注意しなければならないのは、「結末」の段落の秋葉正巳からの手紙は、1978年に書かれたものであるという点である。主人公の「私」は、その人(秋葉)に会いたいと思って、梅雨が明けて間もない猛暑の日に、郊外に向かって電車に乗っている。その今現在からは、十数年ほど前に書かれた秋葉からの手紙を「私」は回想しているのである。 段落構成と要旨; 第一段落(P117,L1~21) 〈発 端〉 いま、ある人に会いに行く私 私はいま、都心とは反対方向に向かう電車に乗っている。これから会いに行こうとしている人物が、何故、これほど私をとらえてやまないのか、わからない。わたしはただ、その人に会いたいと思っているだけだった。 第二段落(P117,L22~P121,L31) 〈展 開〉 一ヶ月ほど前の出来事 展開①(P117,L22~P118,L32) デパートでの買い物 一ヶ月ほど前に、夫が世話になった医師に贈る品物を買うために、デパートに行き、その後駅前にある大型書店へ向かった。 展開②(P118,L33~P120,L22) 書店での出来事 書店めぐりは、私のささやかな、欠かすことのできない楽しみのひとつであった。その駅前の書店で、私は、何故かわからないまま写真展の割引入場券を手にするが、そのことが、あの記憶を生々しく甦らせる原因になった。 展開③(P120,L23~P121,L31) 東京回顧写真展での体験 写真展は、ビルの最上階にあるギャラリーで開かれていたが、さしたる説明がなかったせいか、時代を物語る風景が、私のような年代の者にとってはあり 展 開 登場人物(主人公等) ふれたものばかりだったせいか、過ぎ去った時代への感傷めいたものはさほど味わうことはできなかった。 第三段落(P121,L32~P122,L33) 〈山 場〉 ガーデンパーティーの回想 「一九七八年秋。東京郊外の家。新築記念のガーデンパーティー」と説明された写真のまえで、私の頭は、写真の内容を読み取る前にそのすべてを把握していた。その家は、私の愛した人を象徴してやまない家だった。 あの日、私もこの家のどこかにいて、これと同じ風景を見ているはずだったと思うと、ふいに床がゆるやかに波打って、立っていられなくなるような錯覚にとらわれた。 第四段落(P122,L34~P124,おわり) 〈結 末〉 秋葉正巳からのかつての手紙 「僕の中に巣くう阿佐緒の面影は、あの日以来、ますます大きくなってしまったような気がしています。…それにしても、あなたにしかこんな打ち明け話はできない。…あなたにはあのころから、あなた自身の世界があった。少年にとって、そんな少女は不可解で怖いものなのです。でも、あれほど不可解だったあなたに、僕はまっさきに自分を打ち明けることになったんですからね。そこに、どんな心理のからくりが働いたものやら、考えてみれば不思議です。」 全文の要旨; 私はいま、都心とは反対に向かう電車に乗って、或る人物に会いに行こうとしているが、その人物が、何故、これほど私をとらえてやまないのか、わからない。事の起こりは「東京回顧写真展」で「新築記年のガーデンパーティー」 と題する写真を見たからで、そこには、袴田亮介・阿佐緒夫妻や秋葉正巳らが写っていた。 大 意; 各段落の要旨を順につなげること。 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/55199944b307e87101f6963c.html