「わかりません」と「しりません」の違い 問題例: 1、上司:今日の会議、何時ですか。 部下:知りません。 2、上司:ゴールデンウィークは何をするの? 部下:さあ、知りません。 ・「わかる」と「知る」の意味的な差異 意味的な面から見ると「分かる」というのは「物事についての情報を持っていて、その内容や性質、因果関係などを頭脳の働きでもって把握する、筋道を立てて分類・整理できること」で、「知っている」は「物事についての情報を持っていること、そのことに関して経験や知識があること」に分けられます。知識・情報の有無を問う時は「知っている」を使い、理解を伴う場合は「分かる」を使う。 ・「わかりません」と「しりません」 「しりません」というのは基本的には「知識や情報の有無について問う」表現なので、このように言うと「提供できる情報も知識もない、だからそれ以降のコミュニケーションは不要である」という印象を与えます。 しかし、「分かりません」と答えた場合は、意味の差異でもみたように「(考えていますが)まだ答えが整理できていない、ハッキリ状況を把握していないため回答が提供できない」という意味になり、これ以降もまだコミュニケーションを行うことができる余地があるような印象を与えます。 →例1では「知りません」より「分かりません」を使った方が丁寧な感じを与え、より相応しいと言えます。 (「会議の時間は何時か?」に対し、「知りません」と言ってしまった部下は、上司との「コミュニケーションをシャットアウトした」という印象を与えてしまったため、思いかけずに上司に「冷たい」と思われてしまったのです。) ちなみに、「知らない」には相手を突き放すニュアンスもあります。中国語の「不管」と同じでしょう。恋愛ドラマで怒った恋人に「もうあなたなんて知らない」といって立ち去る場面を見たことがありませんか。 ・自分のことなのに「知らない」って? 「ゴールデンウィークは何をしますか」という質問に対して「知りません」と答えるのは誤りで「分かりません」と答えなければなりません。その理由はこの質問が「話し手自身のゴールデンウィークの過ごし方」であることです。これは「自分自身がゴールデンウィークをどう過ごすか、その知識を持っていない」ということではなく、「どのように過ごすかについて整理できてない、決めかねている」状態であり、このような場合には日本語では「分かりません」を使うのです。 ・「分かっています」にも注意が必要です 問題例: 明日のミーティングの時間、分かりますか? ええ、分かっていますよ。 (え?どうしてそういう態度とるの?)(驚・怒) 「わかっている」も「わかる」と同様、現在の状態を表していますが、「分かっている」は「そのことについては以前にすでに分かった。今も分かる」という意味になり、「私はすでに理解しているので、いまさら解説を付け加えてもらう必要はない」というニュアンスを帯び、相手に非常に失礼な印象を与えてしまうのです。 ≪一番日本語≫2011、6 73―76頁 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/671186fdaef8941ea76e051e.html