話題:中国 「携帯電話実名制」きょうから 注目を集める「携帯電話実名制」が九月一日から始まる。携帯電話によるネット接続申し込みはきょうから、身分証明書を持参し実名登録しなければならなくなった。 2005年以来、業界内では携帯電話実名制実施の是非について論議が続いていた。ここ2年ほどの間にスパムメール、詐欺ショートメールが氾濫、とりわけ昨年年末には携帯サイトのわいせつ問題が明るみになり、実名制実施の声が高まっていた。消息筋によると国内各大手プロバイダーは先月、工業情報化部から実名制実施に関する通知を受け、消費者が長く期待していた携帯電話実名制がついに施行されることになった。 専門家らは、携帯電話実名制の実施はショートメール詐欺など犯罪行為抑制に有利で、被害を受けているユーザーの権益を法的手段を通じて保護することができるという認識でほぼ一致している。また通信セキュリティを保障でき、金融、モバイルペイメントがよりスムーズに普及、3G時代にとって実名制は不可欠としている。 「人民網日本語版」2010年9月1日 注: ① スパム メールとは不要なインターネット広告の電子メール、または迷惑メール等の望まないメールのことです。 ② わいせつサイト ③ プロバイダー:インターネットへの接続サービスをする業者。 ④ 工業情報化部:工信部 ⑤ モバイルペイメント:移动支付 関連資料1 携帯電話実名登録制で、新聞・雑誌スタンド(新聞・雑誌販売店)での携帯電話カードの販売も一時見合わせとなるという。 中国工業情報化部は、9月1日から携帯電話を購入する際には身分証を提出し、携帯電話キャリアがそのデータを保存することを義務づけた。保存される個人データは氏名、身分証番号、住所、連絡先電話番号など。 プリペイドカードは主に新聞・雑誌スタンドなどの小規模店で販売されており、実名登録制の施行で購入者が大幅に減少するのではないかと懸念する声も上がっている。また、新聞・雑誌スタンドではデータの保存や確認が行えないケースが多いことから、カードの販売を一時見合わせることになると伝えられている。 注1 見合わせる:(事情を考えて)することをやめる(延ばす)こと。 関連資料2 携帯電話番号の実名登録制とは、電話番号を申請する際、ユーザーの身分証明書番号を同時に登録することを指す。 周知のように、中国の携帯電話ユーザーが年々大幅に増えており、2008年12月までの携帯電話ユーザー数が6.41億人と中国人口の半分近くを突破するようになった。しかし、携帯電話の普及に伴う諸問題が日増しに深刻化してきているのも事実だ。この問題はただのいたずら電話といった種類のものではなく、ユーザーのプライバシーの漏洩にかかわる 1 重大な問題だからこそ、これほど世間の注目を集めているわけだ。 これまでの携帯電話番号は、金さえ支払えば、好きな番号を選ぶことができる仕組みになっている。身分証明書の提示もいらないし、まして名前なども書き込む必要がないという現状がさまざまな問題を生み出してきた。仮に携帯をなくした場合は探そうとしても探しようがないというのだ。これだけでなく、個人情報の漏洩によるスパムメールがユーザーの日常生活にも影響を与えている。いたずらメッセージや金銭目当ての詐欺メッセージを一日に何通か、ひどい場合は十数通ももらったりする場合がある。 筆者もそういう不愉快なことを毎日経験している。場合かまわずのいたずら電話や自動車販売に関する内容のようなものをもらってむかっとすることもある。だが、個人ではどうしようもないという厳しい現実が目に見えている。したがって、このような問題の根を断ち切るために打ち出されたのが「携帯電話番号の実名登録制」という制度だ。今まで、ジャンクショートメッセージの発信を白日の下でできていたのはまさにこういう監督管理がなかったともいえる。もし実名登録制が施行されれば、ある程度ジャンクショートメッセージという問題の解決にも一役買うのではないかと思われる。 一方、この制度が今年初めて提出されたものではないようだ。実は、この制度は早くも3年前に元の国家情報産業部によって提出されたが、当時は採用されなかった。ただ、あれから三年経った現在、状況が大きく変わったように見える。ある調査データでは、「実名登録制に賛成するか」というアンケートに対し、「賛成」と答えた回答者が2005年の44%から2009年の78%へと、大幅に上昇したことがわかった。それに対し、反対の割合が45%から17%に下がったことも同調査で明らかになった。その原因とは、一体、何だろう。 その原因といえば、現実がすでに教えてくれたと考えられる。ジャンクショートメッセージが一つの「目に見えない公害」になりきったほど人々の日常生活を妨げているから。また、個人の力だけでは何もできないという背景下、実名登録制の登場も一種の成り行きといえる。強力な監督管理制度が汚染された土壌を浄化させることが可能となると思われる。 しかし、そこにもやはり別の問題が起きうる。賛成の人の中には、完全に安心したわけではない。というのは、これだけの数のユーザーの個人情報への管理が心配の種となったからだ。そしてこの問題こそ大きな課題だといえそう。政府側はユーザーに実名で登録するよう義務付ける一方、ユーザーの個人情報などのプライバシーを外部に漏洩しないよう保護する義務もある。これまでみてきたとおり、個人情報の漏洩に通信機関も責任を逃れるわけにはいかない。ここ2年間の「315晩会」では、個人情報の不法売買が暴露された。その売り手といえば、通信機関の勤務者だ。部外者とインサイダーと結託し、不法行為を働くというのは、実に目を見張るような光景だ。これも監督管理が難航する原因だ。 要するに、実名登録制さえ施行すれば安心できるというわけではなく、政府や通信機関もきちんと監督管理の役割を果たさなければ、実名登録制がないのと同然だということになる。 注2 漏洩:ろうえい;ろうせつ 2 本文来源:https://www.wddqw.com/doc/8adfccfb770bf78a652954fe.html